包装のコトども
2020.11.18
mRNAワクチンと物流 ―二本の「鎖」のゆくえ―
『ワクチン開発期待、日経平均が29年ぶり高値』
こんな景気のいい見出しを目にするのは、
ずいぶんと久しぶりのような気がするのは、私だけでしょうか。
本格的な実用化は来年なかば以降、という現実的な見通しもありますが、
95%近い有効性を示す米モデルナ社のコロナワクチンに関する発表は、
文字通り世界のあらゆる市場を大いに活気づけたようです。
予防ワクチンの製法にはいくつかの種類があるようですが、
比較的スピーディに製造でき、安全性が高いとされるのは、
このモデルナ社とファイザー社のもの。
ただ、この『mRNAタイプ』と呼ばれるワクチン、
実際に普及させるには大きな大きな課題が立ちはだかっていると言われます。
それが、低温物流環境の整備です。
というのも、このmRNAタイプのワクチン、
生のウイルスを使用せず、安全性が高いとされる反面、
温度変化による急速な劣化が生じやすく、
なんとセ氏マイナス70℃(!)という、
超低温度帯での輸送が必要となるからなのです。
昨今では医薬品の輸送需要が拡大し、
低温サプライチェーンも高度化してきてはいるものの、
それらはせいぜい、2~8℃の温度範囲で流通させるのが一般的とされているので、
マイナス70℃というのがどのくらい厳しい条件かがわかります。
その難易度は、世界最大の国際輸送物流会社DHLをして、
「未だかつて前例のない難易度」
と言わしめたほどです。
RNAの遺伝子鎖とコールドチェーン(低温物流網)、
二本の鎖が複雑に絡み合う、世紀の難問といった所でしょうか。
さて、このコーナーでは以前にも、
タイにおけるコールドチェーンに関するお話をご紹介しましたが、
じつはタイに限らず、医薬品や生鮮食品の輸送分野で、
コールドチェーンのニーズが全世界的に高まっている模様。
なかでも注目されるのがホルモン治療、ワクチンや、
複雑なタンパク質などの医薬品輸送ニーズ。
今後5年間で、1億平方フィートの冷蔵スペース需要が見込まれるとの試算も。
弊社の主要商材である緩衝材(発泡体)は、
そもそも断熱材としても広く用いられる素材でもあります。
また、素材メーカー各社の製品の中には、
住設建材などにも採用される、断熱性の大変高いものも多数存在します。
こうした分野においても、お客様のビジネス上の課題がそこにある限り、
『コト(付加価値)』のご提案をしてゆかなければいけない…
そんな思いから、弊社では現在ひっそりと新たな規格商品の開発を進めております。
結果はまた、後ほど…。
過去コンテンツ『タイスキにみる、アジアの物流事情』はこちら
→ https://www.oizuru.co.jp/packing/2019/10/post-14.html