包装のコトども

2021.04.22

「非」グローバル化する世界とプラスチック ~バーゼル法改正のインパクト~

「ホント、(廃プラ輸出業者は)バタバタ潰れてます、すごいですよ」

先日、ある産廃処理業者の営業マンがこう呟きました。
彼はその日、古くなった樹脂原料などの回収に立ち会ってくれていたのです。
「やっぱり、バーゼルの影響ですか?」と訊ねてみたところ、
「そうですね。ある程度予測はしていたことですけど、
 いざ発効してみるともう、てんやわんやで…」

有害廃棄物の越境移動や、
その処分に関わる国際的な枠組みである「バーゼル条約」。
これが改正され、本年一月より効力を生じることとなりました。

ごくごくかいつまんで言えば、
その改正の重要ポイントは下表の四点。

これらの条件を満たさないと、
基本的には廃プラの輸出は『違法』となります。
当然といえば当然のことですが、
これまで、廃プラの回収と輸出に依存していた事業者は、
ビジネスが立ち行かなくなるという訳です。

そもそも日本は、国民一人当たりが廃棄するプラスチックごみの量が、
アメリカに次いで世界第二位※1)という「プラごみ大国」。
そしてそのことを「知らない」と答えた国民の比率は、
なんと79.8%※2)という状況です。
さらに、国内でのプラごみの処理方法のほとんどが、
廃プラを燃料などとして用いる「熱回収」であり、
これは欧米の基準では「リサイクル」に含まれないのです。

使用済みのプラスチックを各国がドメスティックに処理しなければならず、
しかも、マテリアル・リサイクルやケミカル・リサイクル
(別の製品への再利用)が推奨される昨今、
国際社会における日本の立ち位置は、
非常に厳しいものと言わざるを得ないでしょう。

とは言え、すべてのプラスチックが地球にとっての害悪か、
と問われれば、その答えは間違いなく「ノー」だと私は考えます。

その一つ目の理由としては、そもそも国内における石油消費量のうち、
プラスチック製造に供されるのはわずか2.8%という事実。
これを削減したところで、石油消費量や二酸化炭素排出量の削減には、
極めて限定的な影響しか及ぼさないことがわかります。

二つ目の理由としては、
輸送・包装資材としてのプラスチックの優秀さです。
プラスチック以前の資材、例えば、
ガラスや紙などといった資材に比べて、
プラスチックは大変に軽く、生産コストが低い上、
耐久性や機密性、製品バリア性、
緩衝性能などが非常に優れているという利点があります。

食品のプラスチック包装を、たとえばパルプやガラスに置き換えれば、
品質保持期間が短くなってフードロスが増加しますし、
緩衝材を削減して機械製品の破損が増加すれば、
そのコストや代替品の生産工程で、また新たな環境負荷が生まれます。

イギリスのシンクタンク「グリーンアライアンス」の分析では、
すべてのプラ包装をガラスや紙に代替したとすると、
包装重量の増加や製造工程の非効率さなどから、
遥かに多くの二酸化炭素を排出することになる、と警告しています※3)。

こうした、ある種「混迷」した状況の只中にあって、
わたしたちは、創業60年、皆さまの大切な製品をお守りしてきた、
高機能発泡体を用いた緩衝包装設計のノウハウを、
いまも事業の柱として位置づけています。

無数の工程を経て大切に生産された、精密で高価な機械製品を、
輸送中の繰り返しの衝撃から確実にお守りすること、
これが、弊社の存在意義の一つの核であると、認識するからです。

そしてもう一つの柱は、時代の要請に従い、
繰り返し利用できる通い箱などのリターナブル資材や、
環境対応品などのニーズに、確実にお応えしてゆくこと。

生出に相談して頂ければ、
そこにいつもパッケージングの『今』があり、『答え』がある。

そのような企業を目指して、
この激動の時を、邁進させて頂く所存です。

※1 UNEP国連環境計画の報告書「シングルユースプラスチック」より
※2「オレンジページくらし予報」の調査より
※3 オンラインメディア:”BBC News Japan”より